ミニチュア・ピンシャー
どんな犬?
小柄で手足は細いですが、ほどよく筋肉質で引き締まったスタイリッシュな身体をしています。つぶらな瞳に、引き締まった顔つきをしていて、全身が艶やかで滑らかな短毛に覆われています。見た目はドーベルマンと非常によく似ていて、ドーベルマンを小さくしたようだと言われることも多いです。「ミニピン」という愛称で呼ばれています。
原産国 |
ドイツ |
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サイズ |
小型犬。JKCの基準では、体高は牡・牝ともに25~30cmを理想としています。 |
体重 |
JKCの基準では、体重は牡・牝ともに4~6kgとされています。 |
値段 |
一般的には、15~35万円ほどと言われています。性別やサイズ、毛色、月齢、血統などによって値段は変わります。あるブリーダーサイトでは、40万円を超える子もいました。 |
毛色 |
JKCの基準では、毛色は単色、ブラック&タン、チョコレート&タンの三種類と定められています。詳しくは以下の通りです。 単色:ディアー・レッド、レディッシュ・ブラウンからダーク・レッド・ブラウンまでがあります。 ブラック&タン:レッド又はブラウンの斑のあるラッカー・ブラック(黒漆色)。斑はできるだけ濃く鮮明ではっきりとしているのが良いとされています。斑は以下のように分布する:目の上、喉の下側、パスターン、足、後脚の内側及び尾の付け根下。胸には 2つの規則正しい明確に分かれた三角形がある。 チョコレート&タン:タンの部分についてはブラック&タンに準じる。 |
特徴
サイズは小柄ですが、とても筋肉質で引き締まった体格と、すらりとした長い手足を持っています。体はバランスが良く、体長と体高がほぼ同じ長さのスクエアな体型をしています。顔つきはシャープな印象で、つぶらな瞳と、ピンと立った耳が特徴です。被毛は艶があり、滑らかな短毛です。全体的にはとても優美で精悍、凜とした佇まいで、まるでドーベルマンを小さくしたようだとも、子鹿のようだとも言われています。
性格の特徴
ミニチュア・ピンシャーは活発で元気と自信に溢れている性格です。負けん気が強く大胆な面も持っているので、自分よりも身体の大きい人や犬にも向かっていくこともあります。愛玩犬としてだけでなく、番犬にも向いている犬種と言われています。
なりやすい病気・症状
大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス・パーセス病)
パテラ(膝蓋骨脱臼)
耳介辺縁皮膚症
飼っている・飼っていた有名人
モデル・アイドル・タレント
森泉、山本モナ
俳優・役者
高岡早紀、吉川愛
スポーツ選手・格闘家
ダルビッシュ有、高橋大輔、アジャ・コング、吉田秀彦、馬淵優佳&瀬戸大也夫妻
ミニチュア・ピンシャーとドーベルマンの違い
ミニチュア・ピンシャーとドーベルマンの見た目はとてもよく似ています。ドーベルマンを小型化したものがミニチュア・ピンシャーだと思っている人も少なくないと言われています。しかし、実はそれぞれ全く違った歴史や背景を持っています。
ミニチュア・ピンシャーの起源は諸説ありますが、17?18世紀頃と言われています。中型犬のヘル・ピンシェルが祖先であると考えられており、これにジャーマン・ピンシャー、ダックスフント、イタリアン・グレー・ハウンド、ミニチュア・シュナウザーなどが交配されたそうです。19世紀には現在とほぼ同じ姿になっていたようです。
一方ドーベルマンの起源は19世紀の後半で、フリードリッヒ・ドーベルマンの手によって護衛犬を作る目的で生まれた犬種です。ミニチュア・ピンシャーと比べるとかなり後に誕生しました。ジャーマン・シェパード・ドッグとジャーマン・ピンシャー、ロットワイラー、マンチェスター・テリアなどの交配により生み出されました。
このように、ミニチュア・ピンシャーとドーベルマンは外見がよく似ていて、交配種で共通している部分もありますが、それぞれ全く異なる歴史を持っています。
断尾って?なぜしっぽを切るの?
ミニチュア・ピンシャーやドーベルマンは短いしっぽのイメージを持っている方も多いかと思います。しかし、ミニチュア・ピンシャーもドーベルマンも生まれたときは皆しっぽが長い状態です。実はミニチュア・ピンシャーのしっぽは生まれつき短いのではなく、「断尾」といって意図的に切られて短くされているのです。犬のしっぽを切るなんて!想像しただけでショックですよね。これにはいくつかの理由があるので、断尾について解説していきます。
断尾の理由
■ 怪我の予防
ミニチュア・ピンシャーがかつて狩猟犬や使役犬として活躍していた時代は、事故や怪我、感染症を未然に防ぐためという観点から昔は断尾が行われていました。人間の都合ではありますが、犬を保護するために行なわれてきました。
■ 美容・外観の目的
現代ではほとんどのミニチュア・ピンシャーは一般家庭で愛玩犬として暮らしています。狩猟犬や使役犬ではなくなったのに断尾が続いている主な理由が美容や外観的な理由によるものです。犬には、「犬種標準」と呼ばれる犬種別に定められた外観の基準があり、この基準に合わせるために断尾が行われています。基準を満たしていると市場価値が上がるそうです。昔からのスタンダードな見た目が良い、またはこうあるほうが美しい、などの美容目的もあります。
断尾の方法
断尾は、通常生後2?5日ほどの子犬に行います。ここでさらに衝撃ですが、なんと無麻酔で行います。無麻酔なのは、生まれたばかりの子犬に麻酔をするのは危険であるという考え方と、生後10日までの生まれてまもない子犬は知覚が発達しておらず痛覚が鈍いので麻酔無しで問題ないという考え方が理由です。しかし、最近では子犬にも痛覚があるという研究結果も出ています。そもそも子犬のしっぽを切ること自体が危険なのではと思うのは私だけでしょうか…。
断尾の方法は以下の2つです。
■ 結紮法(けっさつほう)
しっぽをゴムバンドや紐できつく締めて、血流を遮断してしっぽの組織を壊死させます。壊死させた部分は自然に切れます。
■ 切断法
外科的にしっぽをハサミやメスなどで切り落とす方法です。
断尾によるリスク・悪影響
・感染症
断尾の後に最もよく起きるトラブルが傷口の化膿と感染症と言われています。生まれたばかりで体力も免疫力も十分ではなく、化膿や感染のリスクが高いので傷口をしっかり清潔に保ち、必要であれば抗生物質を投与することもあるそうです。
・幻肢痛
幻肢痛は、すでに切断されて存在しない手や足がまだあるかのように感じられ、痛むというものです。しっぽも手足と同じく、骨や神経、筋肉、血管などがあるため、断尾によってないはずのしっぽが痛むというリスクがあります。
・バランス感覚の欠如
犬のしっぽには様々な役割がありますが、特に歩く・走る・泳ぐ・ジャンプするなどの動作を行う時にバランスをとるためにしっぽを使います。しかし、本来あるべきしっぽがないと、バランスを取りにくくなってしまいます。
・感情表現をしにくくなる
犬の感情はしっぽに現れるというのは有名ですよね。嬉しい時や楽しい時はしっぽをふったり、怖いときはくるんと股下にしまいこんだり、しっぽでたくさんの感情を表現します。人に対してだけではなく、同じ犬にも感情を伝える手段としてしっぽはとても重要です。しかし、しっぽが無いことによって犬同士の意思疎通がしにくくなります。
断尾についての新たな考え方
現代では、断尾をする必要はほとんどありません。また、とても犬に負担をかけてしまうので断尾を禁止する国も出てきました。日本やアメリカ、アジア圏ではまだ断尾が続いていますが、ヨーロッパでは断尾を禁止しようという動きが高まっていて、イギリスでは2006年に禁止となっています。日本では断尾の存在自体を知らない方も多いと思います。少しずつですが、日本でも断尾を行わない動きが出てきています。個人的には、少しでも早く断尾が禁止され、なくなってほしいと思っています。